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「演劇のチラシができるまで」開催しました!

2024.07.11

アイホール レクチャー&ワークショップシリーズ「演劇のチラシができるまで~アイディアを掘り起こすコミュニケーション~」を6月22日(土)に開催しました。

演劇やイベントの宣伝美術や制作に携わる方、または興味のある方を対象にした宣伝美術のワークショップです。クライアントとの打合せ→チラシ作り→プレゼンという過程を体験していただきます。

アイホール レクチャー&ワークショップシリーズとは…
アイホールで築いた舞台芸術のネットワークを活用し、地域社会が抱える諸問題について考えたり、演劇をより深めるレクチャーやワークショップに取り組む企画です。2023年度より開催しています。

~講師紹介~
【講師】山口良太さん(slowcamp)
1983年大阪生まれ。関西を中心に演劇の宣伝美術を手がけるグラフィックデザイナー。関西大学・劇団展覧劇場出身。[近年の仕事]幻灯劇場、サファリ・P、ニットキャップシアター、ギア、関西演劇祭、ストレンジシード静岡など。

【ファシリテーター】大川諒平さん(㐧2劇場)
大阪大学出身・㐧2劇場所属。役者、宣伝美術などを務めるほか、23年2月にはアコースティックバンド「劇団くあとろつ~」主宰として、演劇と融合した音楽ライブ体験の創出を手掛ける。22年より、宣伝美術のためのワークショップを企画。

【ゲスト】サリngROCK(サリングロック)さん(突劇金魚)
劇作家・演出家・俳優。02年、劇団「突劇金魚」を旗揚げ。『愛情マニア』で第15回OMS戯曲賞大賞を、『金色カノジョに桃の虫』で第9回AFF戯曲賞優秀賞を受賞。劇団の公演チラシはほぼ自身で描いている。

~講座の流れ~
自己紹介
 ↓
打合せのデモンストレーション
 ↓
架空の公演のチラシ作り
 ↓
発表

①【自己紹介】
この講座では、架空の公演チラシをグループごとに作成してもらいます。事前にA~Eまでの5つのグループに振り分けました。
グループごとに1人1分間ずつ自己紹介をしていきます。とにかく1分で自分のことをたくさん紹介する。「どんなものが好きか」「どこ出身か」などなど自分のことを紹介し合いました。制限時間が来るたびに自然と拍手が沸き起こり、皆さん笑顔で和やかな雰囲気に。


その後は、グループごとにチーム名を決めます。先ほどの自己紹介を踏まえて、なるべくメンバーの共通点からチーム名を作成しました。

チームA「前のめりフライヤーズ」
理由:話し合いのとき、自然とみんな前のめりで話すから。

チームB「おんたび」
ル裕:音楽と旅行が好きだから。

チームC「NOT BE KOBE」
理由:メンバーが神戸になりきれない人たちだったから。

チームD「あ゛お」
理由:名前の頭文字で「あ」から始まるメンバーが4人「お」から始めるメンバーが1人だったことから

チームE「アンチサマー」
理由:夏が嫌いだから。

②【打合せのデモンストレーション】
まずは山口良太さんとサリngROCKさんによる打合せの様子を拝見。実際にプロのデザイナーの打ち合わせを見ることができるのはとても貴重な機会です!

公演の基本的な情報やあらすじをサリngさんから伺います。
今回、架空の公演チラシを作成する打ち合わせのために、サリngROCKさんには過去に上演した作品の中から選んできていただきました。作品は『少年はニワトリと夢を見る』です。
『少年はニワトリと夢を見る』は、サリngROCKさんが執筆し、岸田國士戯曲賞の最終候補に残った作品です。2017年に初めて上演されました。再演もされている作品ですが、山口さんはご覧になったことがないとのこと。

『少年はニワトリと夢を見る』あらすじ
「村上くんに オモロイ って
言ってもらえるような小説書けますように」
村上くんの13歳の誕生日。深夜。
海辺の洞窟で、僕はそう願い事をした。

ケーキに刺した ろうそく に火をつけて、僕と村上くんは
「文豪になれますように」って願い事をした。

僕らは洞窟の中で、自分が書いた小説を見せ合って、たくさんの未来を夢見た。

ゆらゆら揺れる、ろうそくの灯りの中
「どっちが スゴイ大人 になるか競争しよう」って言い合った。

「赤い空に、黒い雲。その下で、アパートが金色の炎に包まれていました。」

村上くんの18歳の誕生日。夕方。
村上くんは自分の家に火をつけて、その日のうちに、塀の中に閉じ込められた。

僕と村上くんの未来の数に、この日、圧倒的な差ができた。

26
歳になって会社を興した僕は、海沿いを走る電車に揺られている。
塀の中で26歳になった村上くんを、訪ねた帰りなのである。

僕の住む都会に向かってガタゴト揺れながら進む電車は、僕の心も揺らす。
劣等感……嫉妬……選択……決意……
認められたい……認めたくない……

僕はまた数年後、村上くんを訪ねるだろう。
競争は全然終わっていないのだ。

ガタゴト揺れる電車の中。
僕の心は、海辺の洞窟の中で見たろうそく を思い出す。
ゆらゆら揺れるあの炎は
少年だった僕たちに呪いをかけたんだ。

架空の公演会場に設定したのは、東大阪にあった突劇金魚アトリエです。このアトリエは古民家の一室で、お客さんも20名ほどしか入れない空間です。(アトリエは道路拡張工事のため、2020年頃に取り壊されてしまいました)

『少年はニワトリと夢を見る』はご覧になったことのない山口さんですが、突劇金魚の他の公演は観劇されています。そこで、山口さんがサリngROCKさんの公演を観て思ったことも踏まえながら質問していきます。

突劇金魚の公演では、サリngROCKさんがチラシのビジュアルを担当しています。『少年はニワトリと夢を見る』は再演されており、その際チラシのビジュアルは書き直していらっしゃいますが、構成は大きく変わっていない。また、この公演のターゲットは、突劇金魚の公演を観たことのあるコアなファン。ということで、お客さんにも「突劇金魚の公演だ」と伝わりやすいこのイラスト使った方がいいということに。

◆突劇金魚『少年はニワトリと夢を見る』の公演チラシです。




チラシのイメージはこんな感じです。
少年とニワトリはサリngROCKさんのイラストで、パネルに印刷したものを用意。実際にアトリエにパネルを置いて写真を撮ります。壁には炎の絵を合成し、天井から死神の手が伸びてきている。基本の構成は、今までのチラシと大きく変わりませんが、現実と虚構が入り混じったデザインです。

山口さんは1番最初の打合せでデザインの方向性を決めてしまうとのこと。そのためには、たくさん聞いて情報を得なければなりません。好きなものや趣向などヒントをたくさん得るために雑談を多めにされているそうです。普段の打合せは2時間程度かけるそうですが、今回は1時間でここまでデザインの方向性を決めることができました。山口さんのコミュニケーション力凄いです!

会場には、今まで山口さんがデザインされたチラシや打合せのメモを掲示していました。アイホールの事業もたくさん山口さんにデザインしていただいています!

③【チラシ作り】
いよいよ参加者の皆さんにチラシ作りに入ってもらいます。まずは、参加者の皆さんに作成していただく架空の公演について、サリngROCKさんから教えていただきます。

公演タイトルは『海の底で』。サリngROCKさんが5つの短編作品を朗読する、という架空の公演です。
「朗読Bar」という突劇金魚プロデュースの朗読イベントがほぼ毎週大阪で開催されています。そこに向けてサリングさんが執筆した短編作品が増えてきたので「まとめて朗読しよう!」としたのが、今回用意していただいた公演です。会場はこちらも突劇金魚アトリエ。

参加者には講座前に、5つの朗読作品の内容やその作品を執筆した背景をまとめた資料を配布。それをもとにサリngROCKさんから作品について説明していただきました。

作品①『くまと花』あらすじ
くまが「親友の種」という種を見つけて育てる。育った「親友」(花)は「くまの本当の気持ち」をしつこく聞いてくる。くまは、今まで世間や親の言うとおりに生きてきて「本当の気持ち」がわからない。花の質問に正面から答えずにいると花は傷ついて、枯れてしまう。夢の中でくまは「自分の本当の気持ち」を探す方法を花から教わる。

作品②『最後の恐竜』あらすじ
恐竜が絶滅しかけている時代。生まれた時から仲間がいなかった大型恐竜トリケラトプスが、大きい足跡を見つけた。小さな哺乳類キモレステスが「足跡を追いかけて仲間に会いに行かなきゃいけない」とトリケラトプスに必死に勧める。トリケラトプスはそんなことよりも、今見つけた小さな丸い石の話をキモレステスにしたい。

作品③『祝福』あらすじ
畑を耕すのが得意なトラクター。布を縫うのが得意なミシン。役割をこなして褒められていた機械たちだったが、トラクターは自分に全く向いていない彫刻がしたくなる。当然うまくできずに寿命を迎えた。が、動かなくなったトラクターに日が差し込む景色を見たミシンはトラクターを少し羨ましく思う。

作品④『春に、歌う魚』あらすじ

目の見えない彼女と、その彼女の身の回りの世話をする彼氏がいる。二人は餌によって体の色や形が変わる不思議な魚を拾って飼っている。彼氏と彼女はすれ違う。人類は絶滅していく。残された魚は一人で生き続ける。魚は歌を歌い始める。歌が好きだった彼女の爪を餌に与えられていた魚は、歌を歌うことができる。魚は、誰かと再び繋がれるように、誰かに聞こえるように歌を歌う。

作品⑤『二匹のツチノコ』あらすじ
他の誰にも見つけられないという特性を持った二匹のツチノコだが、万が一見つけられた時に敵を倒す練習をする。白ツチノコは心に憎しみを持って攻撃する方法を黒ツチノコに見せる。見ていただけの黒ツチノコは気分が悪くなって倒れてしまう。そんな二匹の練習を見つけるものはまだいない。

説明の後は、参加者からサリngさんに質問タイム。

「5つの作品の中で、1番中心伝えたい作品はありますか?」
「公演の世界観は?海底のイメージ

「各短編作品のタイトルのイメージをイラストにしてチラシに載せてもいい?」
「朗読Barを始めたきっかけは?」
「どんなお客さんに来てほしい?」

朗読BarにサリngROCKさんが出演されるときは、魚の被り物をした「朗読魚」として朗読されているそうです。今回も「朗読魚」として出演するので、その「朗読魚」についての質問も多かったです。
「魚になった経緯は?」
「キャラクターは?」
「読む作品は魚さんが一度は読んだことのあるもの?」
「魚さんが魚相手ではなく人間相手に作品を読むのには理由があるんですか

こちらが「朗読魚」です。


参加者からの質問が落ち着いたところで、お昼休憩をはさみ、グループごとに実際にチラシを作成していきます。チラシのデザインは1人で行うことが多いですが、今回はグループで1つのデザインを作ります。それぞれの意見やアイデアをまとめて形にしていくのは大変なことです。



チラシのデザインは、模造紙に書いていきます。
模造紙が大きいので、どういうコンセプトでデザインしたのかを記入するグループも。製作時間が1時間半という短いなか、グループ全員で手分けして作成していきます。

時間となったところで各グループの発表です。
サリngROCKさんのお話を聞いて、どんなコンセプトでそのデザインにしたのかをプレゼンしてもらいました。

【チーム】前のめりフライヤーズ
深海にいる朗読魚が光に向かって上がっていくイメージ。昆布には短編のタイトルを記載。

【チーム】おんたび
折りたたみの変形チラシ。閉じているときの穴はあぶくで、短編のタイトルものぞかせている。

【チーム】NOT BE KOBE

【チーム】あ゛お

【チーム】アンチサマー

各グループこだわっている部分にしっかり工夫が見られて、とても素敵なデザインでした。
プレゼン後、サリngROCKさん、山口さんから感想をいただきました。チラシを作成してもフィードバックをもらうという機会はなかなかありません。しかもプロの方からいただける、とてもいい機会となりました。

ワークショップは10:00~16:00という長い時間でしたが、みなさん集中を切らさず楽しみながら取り組んでいただきました。そのおかげで、とても充実したいいワークショップになりました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました!

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