「<ダンスワークショップ&パフォーマンス>に寄せて」 志賀玲子

「<ダンスワークショップ&パフォーマンス>に寄せて」 志賀玲子

<ダンスワークショップ&パフォーマンス>企画は、ファシリテーターのもと、オーディションで選ばれた10名程度の参加者が、2~30回100時間前後のワークショップを経て最後に公演を行う企画で、参加者のダンス経験や年齢は不問としました。オーディションでは、稽古をやり抜き、舞台に立つ覚悟だけを問うていた記憶があります。ファシリテーターは11年間に9名のアーティストに依頼し、その顔ぶれは、即興ダンサー、振付家・ダンサー、舞踏家、美術作家、劇作家・演出家と多彩で、いずれも時代の先端を行く、魅力的な活動をしているアーティストでした。

アイホールのワークショップ事業は、この企画を始めるまで、成果発表をあえて行わずにきました。それは、ワークショップは成果を出すことよりも、過程そのものに意味があると考えていたからです。しかしワークショップに継続的に参加された方々の中から、もう一歩踏み込んでダンスをしてみたい、単発のワークショップだけではなく深めてみたいという要望があり、この企画が誕生しました。

この企画でプロデューサーとして最も大切にしていたことは、トレーニングされたダンサーではなく、「ダンス経験や年齢不問」の「素のからだによるダンス」ということでした。様々な年齢、職業、興味関心をもつ人々の「素」のからだによって生み出されるダンスを、ファシリテーターのアーティストに創ってほしいと考えていました。

日本では、1980年代からヨーロッパの新しいダンスがたくさん紹介され、加えて1950年代に日本で生まれた「舞踏」の強い影響の元、独自のコンテンポラリーダンスが生まれてきました。その中でも特に私が注目をしたのは、西洋的なダンスのトレーニングを受けていない、「普通の」人々によるダンスの可能性でした。そこには「普通の」とひとくくりにすることなどできない、多様なからだがありました。今、参加された方々のお名前を眺めてみると、はっきりとお一人お一人の姿が思い出されることに驚かされます。2000年代中盤になると、一般市民による「コミュニティダンス」という概念がイギリスから導入されてきますが、この企画はコミュニティダンスではなく、日本独自のコンテンポラリーダンス探求の一つの形であったと思います。

志賀玲子(しが・れいこ)

1990~2007年度アイホールプロデューサー。滋賀県立びわ湖ホール「夏のフェスティバル」、京都造形芸術大学舞台芸術センタープロデューサー、(一社)地域創造「公共ホール現代ダンス活性化事業」コーディネイター、大阪大学コミュニケーション・デザインセンター特任教授を経て、2021年度より豊岡市立城崎国際アートセンター館長。