Syozo Shimamoto Exhibition REPORT
プロセス  


天と地が合体した絵画

   数年前よりクレーン車で20メートルの高さよりカラーを落下させて絵を描くようになった。それは心筋梗塞によって平地で右手でガラスビンを投げて描くことにドクターストップがかかったからである。2000年11月11日に伊丹市が市制60周年の記念事業としてぼくの空中からの描画を企画してくれた。25メートル平方のキャンバスというおそらく世界のどこにもない大きな規模で実施した。はじめ熱気球からということであったが突風のためにクレーン車変更になった。このパフォーマンスでははじめてLOCOが発明したLOCO-CUPロケットを使用した。蓋のついた透明のプラカップに染料を入れたのを球体に作られたLOCO-CUPにつきさしてそれを20メートルから落下させる。落下する途中で30の色がはじける。中央にベンツが高所に置かれ、その上に落下させた。ところが実際に行なってみると不思議な事に今までと異なっている。ビン投げの描法は40年以上も実施して来たので原理的には同じはずであるのに全く違った画面が生じたのである。これは高所から落下するために起こる強圧によって別の何かが生まれたのではないだろうか。嶋本昭三の作品の画像 しかし、このときハッと思い出すことがあった。神秘的な言い方になるが「大地」が目覚め「地面との対話」がなされたのである。ぼくには、デニスバンクスというアメリカンインディアンの親友がいる。彼がロンドンよりモスクワまで魂の解放を叫んで走ったとき随行してランのサポートをしたことがある。彼らからしばしば聞いた中に「大地」という言葉がある。「母なる大地」とか「大地の精霊」という言葉も始終飛び出してきていたがこの言葉が今甦った。ぼくは73才、齢を重ねるにつれて肉体や身体の機能は衰えて来るのであるが逆に「天空」が見え「大地」の声が聞こえるようになった。阪神大震災のおり、ぼくの住んでいる西宮の高台の近くの山が崩れ赤土が露出している中を通行したのであるが、突然耳に聴こえてきたのはマーラーの「大地の歌」であった。この曲は、正しく「大地」の叫びである。以降ぼくはヘッドフォンステレオにこの「大地の歌」をかけて毎日赤土の中を歩いた。インディアン達の主張する「大地」の声を聴く毎日であった。今この出来上がった作品を見るにつけこれはキャンバスの上に描かれたものでなく、大地が20メートルよりの落下に呼応して「地の中」より浮かび上がり合体したものである。この巨大なクロスの高所よりの衝撃が「大地」の声を浮上させ様々な何百種類というアートが出来上がった。最近絵というものは絵を作り上げることではなく絵を捨てることであると悟る境地になったが、これは絵を捨てた彼方に創られた絵である。
 


LOCO-CUP ロケット

  紙コップアーティストLOCOが制作したコップ300個を繋ぎ合わせた球体オブジェ。これは頭にかぶる「コップ人間」としてFOCUSにも紹介されたが、今回、嶋本昭三とのコラボレーションによって新しい作品が誕生した。球体を絵を描くための媒体にしてしまうのだ。この球体の中にペイントを入れる・・・ところが球体であるので中身がこぼれてしまう。そこで、球体とは別に1つ1つのコップにペイントを入れ蓋をかぶせる。そして、球体にスポスポとはめ込んでいくのだ。すると、一回の投下で、何種類もの色が球体からロケットのように地面にむけて飛び出していくのである! 地面との対話がなされた時つぎつぎと色がはじけ、嶋本昭三にとっても、また他のどのような絵画にもなかったアートが出現する。


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